Chapters
- 01. フランス式ボクシング
- 02. 英国式ボクシング
- 03. タイ式ボクシング(ムエタイ)
- 04. シャドーボクシング
- 05. フランス式キックボクシング
- 06. 中国武術
- 07. 米国式ボクシング(キックボクシング)
ボクシングの手法とスタイル
「ボクシングはつま先立ちでリング中央に立っているだけのスポーツではなく、とてつもない緊張の中で冷静さと優美さが求められる競技なのです」 ピーター・バーグ
ボクシングというと不良がやるスポーツのイメージがありますが、決してそんなことはありません!
ボクシングはストレスを発散させ審判がKOを叫ぶ声を聞くためにしつこく打ち合うだけのスポーツだと誤解している人たちに、その悪いイメージを払拭してもらいたいと思います。
実際、この格闘技は繊細で精緻な技術が求められ、国や地域により様々なバリエーションがあります。
映画、小説、ポピュラーカルチャーでとり上げられているボクシングは、大半が拳だけを武器として使用することが許された英国式ボクシングですが、他にも世界各国色んなスタイルの格闘技が存在しています。
米国式ボクシング、空手、キックボクシング、テコンドー、ミャンマーのラウェイ、総合格闘技(MMA )、ベトナムの伝統格闘技であるボビナム、ブラジリアン柔術、フリーファイティング、クメールボクシング、フルコンタクト、カンフー、合気道、ラオスのムエラオ、武道、太極拳、護身術、フランス式ボクシングのサバット、ムエタイ、英国式ボクシングと数えたらきりがありません。
この記事では最後の3種類の格闘技を中心として、その他にリングを自在に移動する練習とあらゆるボクシングの共通点としてシャドーボクシングを加えて説明していきます。
フランス式ボクシング
キックボクシングから生まれたフランス式ボクシングは19世紀に広まった「サバット」と呼ばれる競技で足も使います。
その名が示す通り、フランス式ボクシングは主にフランスで実施されています。比較的歴史が浅く、戦時中は競技者がいなくなるという黎明期を迎えますが、このフランス伝統のスポーツの起源は遥か昔までさかのぼります。
19世紀には既にフランス文学において複数の書物に「リング」(「ボクシング」を表す当時の英国風表現)が登場しています。
テオフィル・ゴーティエも、「サバット」に興味を持った作家のひとりです。彼はフランス式ボクシングについて、「落ち着き、計算、俊敏性、力強さが求められる深遠な科学だ」または「輝きとロマンに満ちた荒々しいゲームだ」と語っています。フランス元首相のクレマンソーは、かの有名な「タイガー・ブリゲード」を開始した時に、この競技について十分に理解していたのでしょう。
『三銃士』や冒険物語の作者であるアレクサンドル・デュマは、サバットまたはフランス式キックボクシングについて、「サバットはボクシングとは正反対であるという点を除いてはボクシングと全く同じである」という捻った感想を書いています。彼はフランス式ボクシングの祖であるシャルル・ルクールのことを「天才」と評しています。

これらの情報をもとに、サバット用シューズを着用する紳士たちが集うサバットのクラブを検索してみましょう。
サバットは、西欧のキックボクシング手法を組み合わせて手足を武器として使うフランスの武術です。
フランス式ボクシングではチェストガード(胸部プロテクター)、マウスガード、グローブ、ボクシングシューズを着用します。
性別、体重、階級、年齢、大会に応じて1ラウンド1分30秒から2分を3~5ラウンド実施します。
許可されている技は洗練されていて、厳しくルールが設けられています。特定の打撃しか許可されません。この競技では、パンチよりも足技の方が重視されています。
フランス式ボクシングは驚くほど優美で、選手には厳しいマナーとフェアプレイの精神が求められます。現在、フランス国内の競技人口は5万を超えています。
フランス式ボクシングにはサバット・フォルム、サバット・ディファンス、フェンシングのようにステッキを使うカンヌ・ド・コンバットなどの複数の流儀があります。
英国式ボクシング
英国式ボクシングは最もよく知られた拳闘形式で、英国内にとどまらず世界中に広まりました。
この普及と、他の格闘技と比較してルールが簡単だったため、英国式ボクシングは「高貴な芸術」という称号を得ています。ほとんどの選手は、ボクシングの世界チャンピオンになることを夢見ています。ボクシングはオリンピックの正式種目にも含まれています。
ボクシングは、英国のブックキーパー(賭け屋)たちの間で編成された野蛮な地下格闘技の体系化により進化しました。英国人が何でも賭けの対象にするのが好きなことは有名です。
即興のストリートファイトから規制されたボクシング形式に成長したことで、必ず選手に大きなダメージを残していた野蛮なピュージリズム(古代ボクシングの名称)は表舞台から姿を消しました。それまでのボクシングでは多くの死者が出ていました。18世紀に、ジャック・ブロートンはリングで対戦相手を過失で死なせてしまったため、このスポーツにはもっと規制が必要ではないかと考えました。

彼はスコットランドの有名なクイーンズベリー侯爵の助けを借りて、ブロートン・コードを発表しました。このコードは現在でも英国式ボクシングの精神の一部となっています。
安全グローブ、片方が「ストップ」を叫んだ場合の攻撃の中止、つかみ合いその他反則行為の禁止、地面に倒れている相手への攻撃の禁止など、現在では当然に思えるルールがあるのも、このふたりのおかげです。
装備はボクシンググローブ、シューズ、アマチュアの場合はヘッドギアです。プロボクサーは常に圧倒的な人気を誇っています。
マイク・タイソン、モハメド・アリ、タイソン・フューリーの名前を聞いたことがない人はいないでしょう。
自宅近辺のボクシングレッスンを検索すると、多数の候補が表示されますが、Superprofのボクシング講師なら外れがありません。
タイ式ボクシング(ムエタイ)
その名が示すように、タイ式ボクシング(ムエタイ)の発祥地は東南アジアです。特にタイでは格闘技が盛んです。
タイ式ボクシングはプロフェッショナルなスポーツ競技で、タイの伝統的な国技であると同時に地元経済の大事な収入源としての役割も果たしています。
この記事では他の格闘技と区別するために「タイ式ボクシング」と呼んでいますが、東南アジア諸国では、古代の戦闘技法の基本的な武術を表す「ムエタイ」として認定されています。
はっきり言うと、ムエタイは前述のフランス式ボクシングや英国式ボクシングよりずっと暴力的です。近接戦のため、あらゆる状況下での攻撃や防御のテクニックを学びたい人におすすめです。この技法は、過激な暴力に溢れた時代には有効でしょう。
しかし、ムエタイではどんな技でも許されているわけではありません。他の格闘技と同様にルールは存在します。

かつて、タイでは多数のボクサーたちが試合中に不慮の死を遂げていました。一部の決闘では迅速かつ効率的に闘うために拳に割れたガラスをあてるなど、卑劣な手が使われていました。
この時代は、1921年にタイでムエタイが廃止された時に終わりを告げました。この廃止により暴力的な格闘技が疑問詞されるようになり、数年後に英国式ボクシングを採り入れた現代的なルールによりムエタイが復活しました。
グローブ、リング、ラウンド、ベルによる試合終了、頭部などへのハイキックやローキックなどもルールに盛り込まれました。タイ式ボクシングはこの半世紀の間に世界中で人気となりました。
タイ式ボクシングでは拳、足、肘、脛、膝、二の腕など前述のフランス式ボクシングや英国式ボクシングより多くの部位の使用の他、首相撲も認められています。
シャドーボクシング
格闘技について読んだ後は、少し穏やかな話題でひと息いれましょう。
血生臭い話が苦手な人には、シャドーボクシングがおすすめです。これは対戦相手も痛みもないボクシングです。
そんなボクシングがあるわけないと思うかもしれませんが、シャドーボクシングでは仮想の敵、つまり霊や影(シャドー)と闘います。言い換えると、虚空に向かってボクシングをするわけです。
このエクササイズは想像するよりも楽しくて効果的です。シャドーボクシングは本来、プロまたはアマチュアのボクサーがトレーナーの代わりを務めるために編み出されました。
シャドーボクシングは有酸素運動です。このエクササイズはサバット、英国式ボクシング、東洋格闘技などあらゆる種類の格闘技に有効です。選手は自分の競技ルールに合わせて防御法、手法、ストローク、フットワークを磨きます。また、競技の時間、分数、秒数などのタイミングを計りリズムを整える効果もあります。
コーチに自分のフォームを見てもらうことも有効です。コーチは欠点などを指摘して適切なアドバイスを与えてくれます。コーチがいない場合は、シャドーボクシングをしている自分の姿を映像に収めるか、鏡に囲まれた状態で自分のフォームを観察します。
音楽が好きな人は、ミュージックをかけながらシャドーボクシングをしてもいいでしょう。フィットネス・ボクシングはシャドーボクシングから派生したエクササイズで、パンチングボールやサンドバッグに近い運動です。
フランス式キックボクシング
サバットは、1797年に登場した格闘技で、当時は不良たちのスポーツでした。
ボクシングシューズはマルセイユで誕生して、足だけを使う格闘技で使用されました。
ふたつのスポーツとボクシングのルールが組み合わされ、現在のフランス式ボクシングになりました。
現在のサバットはストリートファイトではなく紳士が嗜むスポーツです。この競技のルールは1877年にジョセフ・チャーモントが制定しました。彼は後にフランスボクシング連盟を設立しました。
チャールズ・チャーモントとジェリー・ドリスコルの会合により、フランス式ボクシングは日の目を見ることになりました
1903年にFédération Française de Boxe(フランスボクシング連盟)が創立されると、多数の会員がリングに上がりました。現在、サバットの競技人口は50,000人です。

フランス式ボクシングは年齢別のカテゴリーに分かれています。
7-9歳 | 10-11歳 | 12-13歳 | 14-15歳 | 16-17歳 | 18-20 歳 | 21-34 歳 |
プリプーサン | プーサン | ベンジャミン | ミニム | カデット | ジュニア | シニア |
また、次のように体重別に分類されています。
- フライ級:48 kg未満
- ルースター級:48~52 kg
- フェザー級:52~56 kg,
- ライトウェイト級:56~60 kg
- スーパーライト級:60~65 kg,
- ミディアム級:65~70 kg
- S / M / ミディアム級:70~75 kg,
- ミドル級:75~80 kg(女子の場合は75 kg以上)
- ミディアムヘビー: 80~85 kg,
- ヘビーウェイト:85 kg以上
選手には一定の技術レベルが必要です。各レベル(段位)は3階級に分かれ、次の色により識別されます。
- ブルー
- グリーン
- レッド
- ホワイト
- イエロー
- シルバー
- ブロンズ
最後のふたつのランクでは、互いの大会に出場する許可が与えられます。
国際サバット連盟では11種類の蹴り技(ホイップ、チェイス、スウェーなど)と4種類の殴打(フック、ダイレクト、スウィング、アッパーカット)を認めています。膝、脛、肘の使用は禁じられています。
中国武術
まず、中国武術とひとくくりに言っても、欧米で散打と考えられているものは実際には中国武術の一種に過ぎません。
中国武術は、古代中国(紀元前27世紀)の軍隊での自衛と訓練のために生み出されました。
5世紀になると、少林寺の仏僧が僧の体調改善と僧院を敵から守ることを目的としてエクササイズを編み出しました。

中国拳法は16世紀に少林寺の僧による武術の教練として誕生しました。少林拳や武術太極拳のように格闘のない中国拳法と武術は1949年に中国人と省の公式スポーツになりました。
道場で武術が再導入されたのは、毛沢東時代の1975年になってからでした。
もちろん、中国拳法は英国式ボクシング、サバット、ムエタイとは違います。中国拳法は精神性と肉体の制御を重視しているため、相手を倒すために殴打するだけのスポーツではありません。
中国武術は護身術、人生哲学であり、体得者の肉体的および身体的限界を引き出す技です
怪我を避けるためには筋肉をつけて自分の体に注意を払うことが大切です。散打、カンフー、套路(とうろ)などの中国武術の練習では特に重要となります。
米国式ボクシング(キックボクシング)
キックボクシングは対戦相手との距離を縮めることを重視するため、「フルコンタクト」とも呼ばれています。
KOは認められていて、選手は地面に倒れていても殴り合えます。このため、他のタイプの格闘技と比べて感染のリスクが高くなります。米国の格闘技からはルールがかなり自由な総合格闘技(MMA)も生まれています。
アメリカでキックボクシングが台頭したのは1960年代でしたが、当時のボクシングはフルコンタクトとは全く異なっていました。米国はマイク・タイソン、モハメド・アリ、ジョー・フレージャー、フロイド・メイウェザーなどボクシングのスター選手の宝庫でしたが、MMAが登場したのは1970年代になってからでした。
キックボクシングは次第に国際的に知られるようになり、現在では世界中でトーナメントが開催されています。
キックボクシングには英国式ボクシング(パンチOK)とクラヴ・マガ(護身術)のような古代武術(キックOK)の体系が採り入れられています。キックボクシングでは頭部、胴体、足への攻撃が認められています。

相手をつかむこと、相手が倒れている時に攻撃すること、レフェリーがホイッスルを吹いた後も闘い続けること、相手に背を向けること、相手を抱え上げたり投げ飛ばしたりすること、相手がロープにもたれている時に攻撃することは禁止されています。
英国式ボクシングとキックボクシングには重複するルールもあるため、ボクサーはキックボクシングにすぐ慣れることができます。
- パンチの種類:アッパーカット、ストレート、フック、バックハンドブロー、オーバーカット、ジャンプパンチ
- 従来のキックの種類:サイドキック、フロントキック、リバースキック、バックキック、ハンマーキック
- 跳び蹴りの種類:フロントジャンピングキック、サイドジャンピングキック、フックジャンピングキック、バックジャンピングキック、後ろ回し蹴り
勝つためにも、怪我を避けるためにも、選手は防御に取り組む必要があります。
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