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詩は考古学者が発見した古代文学でも最古の文学ジャンルです。
『ギルガメッシュ叙事詩』はシュメール人により7000年以上前に書かれました。ギルガメッシュ叙事詩は現存する最古の文学作品です。
古代の詩人は、約3000年前の古代ギリシャまで遡れます。その後、詩は日本の俳句から英国のロマン派詩人パーシー・ビッシュ・シェリーやウィリアム・ワーズワース、およびチャールズ・ブコウスキー、シェル・シルヴァスタインやラルフ・ウォルドー・エマーソンなどの米国の詩人まで様々なスタイルに発展し、世界中で進化していきました。
下記は、歴史に名を遺した詩人5選のリストです。彼らの作品は同年代の詩人に大きな影響を与えました。
「頭の先が吹き飛ぶように感じられた時、私はこれこそが詩であると理解する」
– 米国の詩人エミリー・ディキンソン
「古代詩イーリアスとオデュッセイアの作者」ホメーロス

ホメーロスの出身ははっきりしていないため一部の学者からは実在しなかったとされていますが、この作者については多くの説が伝えられていて、中でもホメーロスは現在のトルコにあたるアナトリア半島にあったキオスという都市の出身である盲目の吟遊詩人だったという説が有名です。
彼の作品であるとされている2つの偉大な詩作についても、議論の対象となっています。ふたつの作品はひとりの天才詩人により書かれたと主張する学者もいれば、『イーリアス』と『オデュッセイア』はまとめてホメーロスと呼ばれるようになった数人の寄稿者による作品と書き直しであると考えている学者もいます。
それでも、このふたつの詩は現在では不朽の古典として評価されていて、西洋では多くの学校の授業で教えられ、今日まで多くの作家、芸術家、映画監督にインスピレーションを与えています。
『イーリアス』はトロイア戦争が舞台で、トロイの都市の包囲についての話です。この古代ギリシャ叙事詩は強弱弱六歩格(各脚がひとつの長音節とふたつの短音節で構成される6韻脚の連)で、史実、伝説、ギリシャ神話が織り交ぜられています。
『オデュッセイア』は、一般的にユリシーズとして知られるオデュッセイアと彼がイタケー王国へ戻るための10年間の漂白が中心です。
「人の世の移り変わりは木の葉のそれとかわりがない
風が木の葉を散らかすかと思えば春が来て、蘇った森に新葉が芽生えてくる
そのように人間の世代もあるものは生じ、あるものは移ろいてゆく
– ホメーロス『イーリアス』(松平千秋訳)
ウィリアム・シェイクスピアとその詩作品

シェイクスピアは全英文学で最も有名な作家であると同時に、詩人、劇作家、俳優でもありました。彼は現代でも世界で最も卓越した劇作家と見なされています。
彼は全時代で最も有名な恋愛悲劇である『ロミオとジュリエット』を含めた演劇作品で知られています。この作品は劇場、ブロードウェイ、ハリウッドで何度も採用されました。
現在でも、シェイクスピアの劇は世界中でいつでも上演されています。ロンドン劇場の舞台では彼の劇作品が複数上演されていることもあります。
彼のソネットや物語詩は、彼の劇作品ほどは有名ではありません。
シェイクスピアのソネット154篇は、彼の晩年にあたる1609年に出版されました。おそらく、この出版は彼の希望ではなく、発表された順番も実際の時系列や作者の意図とは異なりました。
惜しみなき愛らしさの消費者よ、なぜあなたは
あなたの美の遺産を自分自身のために消費してしまうのだろうか?
自然はその美質を無償で与えることはなく貸し付けるだけだ、
自然は率直な者に寛容さを貸し付ける
美しい浪費者よ、なぜあなたは、
与えるために与えられた豊かな美質を濫用するのだろうか?
利益を得ない貸し付け者よ、なぜあなたは、
そんなにも多額な金額を消費しながら、
なお豊かに生きることができないのだろう?
自分自身と付き合うだけでは、
あなたは甘美な自分自身を自ら欺くことになる。
いつどのように自然はあなたにこの世を去る時期を告げるだろう?
あなたはどれだけ受け入れ可能な収支を残せるだろう?
あなたの美貌はもし消費しなければあなたの死とともに墓に葬られるだろう
消費されるなら、あなたの遺言執行人としての子孫に引き継がれるだろう。
– ウィリアム・シェイクスピア『美男子』ソネット5番(南原充士 訳)
「ロマン主義の詩人」ジョン・キーツ

1795年生まれのキーツは、18世紀末に欧州で誕生した芸術家たちの運動であるロマン主義第2波に数えられます。
彼は肺炎のために25歳で亡くなったので、詩人としての活動期間は短いものでした。存命中、彼の詩は批評家たちにあまり高く評価されませんでしたが、死後に名声を得て現在では最も人気がある英国の詩人のひとりに挙げられています。
彼の流儀は、ロマン主義に典型的な官能的表現が特徴です。
キーツの作品の数点はとても有名で、最も分析された英文学作品にランクインしています。『ナイチンゲールに寄せて』は、彼が書いた最も有名な詩です。
これはお前の幸せを妬んでのことではない
むしろお前の幸せはわたしの幸せなのだ
軽やかな羽根を持った木々の精よ
お前はブナの緑の影で音も妙に
無数の葉影に包まれながら
滑らかな声で夏を歌う
– ジョン・キーツ『ナイチンゲールに寄せて』5~10行
「ゴシックロマン派詩人」エドガー・アラン・ポー

1849年にボストンで生まれたエドガー・アラン・ポーは、ロバート・フロスト、ウォルト・ホイットマン、ラングストン・ヒューズ、シルヴィア・プラスと並び最も有名な米国詩人のひとりです。
彼は執筆だけで生計を立てた初の米国人作家のひとりでした。彼は『サザン・リテラリー・メッセンジャー』に入社(飲酒のため1回馘になったが後に再就職)した後、20代後半で身を立てました。
ポーは1歳の時に父親に見捨てられ、1年後に母親が亡くなるという波乱に満ちた幼少期を過ごしました。彼はアラン家の養子となりましたが、家族とは問題の多い関係でした。
不幸な生い立ちのせいか、または一般的な嗜好に合わせたジャンルを選択したせいか、彼の作品には死、死人の蘇生や悲嘆などのテーマを扱うものが多くなりました。
ポーが公に忌み嫌っていた超越主義とは反対に、彼の作品の大半はダークロマンのジャンルに分類されると考えられています。
彼は欧州でも有名になった初の米国人作家のひとりで、特にフランスで彼の作品は有名な詩人であるシャルル・ボードレールにより翻訳されました。
彼が『シャーロックホームズの冒険』の作者であるアーサー・コナン・ドイルの作品にインスピレーションを与えたことは有名です。ドイルは「ポーの探偵小説は文学が発達した起点です。ポーが命を吹き込むまで、探偵小説は存在しませんでした」 と語っています。
現存するポーの作品の初版は多くありませんが、その1冊は2009年にニューヨークのオークションで662,500ドルの値が付けられました。これはアメリカ文学の作品中で最高金額でした。
「あるわびしい夜更け時 わたしはひそかに瞑想していた
忘却の彼方へと去っていった くさぐさのことどもを
かくてうつらうつらと眠りかけるや 突然音が聞こえてきた
なにかを叩いているような音 我が部屋のドアを叩く音
いったい何者なのだろう 我が部屋のドアを叩くのは
それだけで 後はなにも起こらなかった」
– エドガー・アラン・ポー『大鴉』(壺齋散人訳)
「現代アメリカの魂」マヤ・アンジェロウ

マヤ・アンジェロウは非凡な人生を送りました。1928年に南部ミズーリ州に生まれた彼女は、1969年に出版され国際的なベストセラーとなった自伝『歌え、翔べない鳥たちよ』で自分の不幸な子供時代を回想しています。
全7作集の最初の本で、彼女は自分が愛と決意により人種差別やトラウマを克服した方法を語っています。
彼女は子供時代から詩を書き、自分を癒す手段として文学を選びました。マヤ・アンジェロウは『ポーギーとベス』の欧州ツアーのキャストメンバーや、1950年代のカリプソ音楽の歌手など様々な職を経た後、最初の作品を発表しました。
1971年に出版された初の詩集『Just Give Me a Cool Drink of Water ‘fore I Diiie』はピューリッツァー賞にノミネートされました。
ビル・クリントン大統領の就任式で、彼女は『朝の鼓動』を朗読して、大統領就任式で詩を朗読した初のアフリカ系アメリカ人および初の女性になりました。翌年、彼女は「最優秀スポークン・ワード」部門でグラミー賞を授与されました。
自伝の中で、彼女は子供時代にウィリアム・シェイクスピア、エドガー・アラン・ポー、ダグラス・ジョンソンの作品から大きな影響を受けたと語っています。
彼女自身はアフリカ系アメリカ人の文学に大きなインパクトを残し、その作品はカニエ・ウェスト、トゥパック・シャクール、ニッキー・ミナージュなど現代のヒップホップミュージシャンたちにも影響を与えています。
岩よ、河よ、木よ、
ずっと前に死に絶えてしまった種の宿主に
巨像マストドンも痕跡を残している
恐竜は自らの印を残した
ここに生きた印を
この地球に生きた印を
自分たちの早すぎた絶滅による警告は
塵と時代の栄光の中にかき消された
だが今日、岩ははっきりと力強く叫んでいる
立ち上がれ、私を背にして
運命と対峙せよ
私の陰に天国を求めてはいけないと
私はお前たちに隠れ場所は与えない
天使よりほんの少し低い階級として創造されたお前たちは残酷な闇の中に屈みこみ、無知の中に顔を下向けた時間があまりにも長すぎた
お前たちの口は呪文をつぶやく
虐殺に備え武装したまま
– マヤ・アンジェロウ『朝の鼓動』
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